RIDERS CLUB 2021年 3月号 掲載

好きだから、こだわりたい
完璧なハンドリングを目指した革新的なシャシーを、空力に拘ったカウリングで包む。異型のマシンは、ひとりのエンジニアの偉業を綴る序章となった。
珠玉のハンドリングを世に知らしめたビモータ初の公道用コンプリートマシン bimota SB2
PHOTO :A.KUWAYAMA / TEXT :K.ITOH / 取材協力 :モトコルセ / TEL. 046-220-1711 / http://www.motocorse.jp
TESI H2の発売で話題沸騰のビモータだが、遡れば1966年にイタリア・リミニで創業した小さな油圧・空調関係の設備会社。創始者のひとりであるマッシモ・タンブリーニが、趣味のバイクレースで転倒大破したCB750Fourを修復するため、仕事で使っているパイプベンダーでオリジナルフレームを作成したのが始まりだ。
当初はレース用フレームを手掛けていたが、SB2は1977年にビモータ初の公道用市販バイクとして発売された歴史的な一台である。エンジンは当時最新のスズキGS750の並列4気筒。そして注目のフレームは、GSのコンベンショナルなダブルクレードルとは全く異なるクロモリ鋼管製のトラスで、シリンダーヘッドなど各所のクリアランスがミリ単位と猛烈にコンパクト。しかもステアリングヘッドとスイングアームを繋ぐバックボーン部の中間に円錐状の接合部を持ち(剛性を落とさずに接合するテーパークランプロックシステム)、前後に分割が可能。この構造でないとエンジンを着脱できないのが主な理由だが、それゆえにエンジンからシャシーを簡単に剥離できるように設計され、高いメンテナンス性も実現している。
そしてスイングアームは、ピボットをドライブスプロケットと同心とするコアキシャルタイプを採用。スイングアームの上下動に対してドライブ / ドリブン軸間距離が変化せず、長大なスイングアームはホイールベースに対する割合が大きく、加減速時の路面追従性の向上と、姿勢変化の抑制を狙った画期的な構造だ。しかもリアサスペンションは、アルミ切削のベルクランクを持つリンク式のモノショック。当時はGPマシンでも2本ショックが主流で、市販車でリンクサスが登場するのは80年代に入ってからなので、かなり先進的なメカニズムといえる。
フロントも一見すると一般的な正立フォークだが、じつはトップ / アンダーブリッジでステムシャフトを傾斜してセットする方式を取る。これはブレーキ時のトレール変化を抑え、直進性と軽快なハンドリングの両立を狙ったものだ。タンブリーニのバイク作りに対する拘りと情熱は、天才・鬼才といった表現を遥かに凌駕する。そしてこのSB2はモトコルセが顧客に販売したオーナー車両だが、ビモータと強力なリレーションを築き、精通する同社が高いコンディションを保ち、その価値を維持するべく技術と情熱を注ぎ込む。両者の熱い想いが存在しなければ、どんな名車も世に出て生き続けることは不可能なのだ。
・カウルの大型ナックルガードは、ダウンフォースの向上を狙った空力デバイスの先駆け。ホイールはタンブリーニがカンパニューロに特別オーダーした、星型の鋳造マグネシウム。
・ブレーキ時のトレール変化を抑えるための特異なステア軸構造により、トップブリッジ側ではマイナスオフセット。セパレートハンドルはかなり低く幅狭。メーターはGS750の純正品。
・金属製の燃料タンクにFRPを貼り込んだ一体型のタンクシートは、フレーム側にシートレールを持たないモノコック構造。テールランプとウインカーはGS750の純正品。
・クロモリ鋼管のトラスフレームは、航空機で用いられる円錐状の接合部で前後に2分割でき、メンテ性も追求。スイングアームはビポットがドライブ軸と同心のコアキシャル式。リアのリンク式のモノサスはかなり先進的。
SPECFICATIONS
フレーム | クロモリ製トラスバックボーンフレーム / テーパークランプロックシステム |
スイングアーム | コアキシャルボックスセクションパイプスイングアーム |
エンジン型式 | SUZUKI製 空冷4ストローク並列4気筒 |
バルブ形式 | DOHC2バルブ |
排気量 | 748cc |
ボア x ストローク | 65.0 x 56.4mm |
最高出力 | 55.9kw (76ps) / 8700rpm |
最大トルク | 56.9Nm (5.8kgf・m) / 8250rpm |
燃料供給システム | ミクニ製 VM26SS キャブレター |
全長 x 全幅 x 全高 | 2010 x 620 x1090mm |
ホイールベース | 1390mm |
シート高 | 770mm |
フロントサスペンション | CERIANI製 Φ35mm 正立フォーク |
リアサスペンション | CORTE & COSSO製 トップリンクタイプ |
ブレーキキャリパー | F=ブレンボ製 キャスティングアルミニウム対向2ピストン || R=ブレンボ製 F08 キャスティングアルミニウム対向2ピストン |
ホイール | bimota - CAMPAGNOLO製 鋳造 マグネシウムホイール |
タイヤサイズ | F=3.50-18 S41 || R=130/80-18 M48 |
燃料タンク / 容量 | アルミニウム製 18L |
フェアリング素材 | ガラス繊維強化プラスチック |
乾燥重量 | 185kg |
生産台数 | 140台 |

メディア インフォメーション
RIDERS CLUB 2021年 3月号 掲載
巻頭特集は「春に差がつく! 冬の集中トレーニング」。
■ パート1: 元MotoGPライダー中野真矢さんの「ライディングフォーム固め」 中野さんはサーキット走行で重要な、ライディングフォームをレクチャー。ストレートは全力で伏せ、それからコーナリングへのアプローチ。さらにミニバイクを使ったフォーム固めを解説しています。
■ パート2: 元MotoGPライダー青木宣篤さんの「全力ニーグリップ」 青木さんのプライベートレッスン「アオキファクトリーコーチング」を誌面で再現。 テーマは、ポーツライディングの基本中の基本ニーグリップです。まず理論を説明し、それから実践編へと移行。ヒザより内モモを意識して、バイクと体の「接面」を増やす方法をレクチャーします。
■ パート3: レーシングライダー高田速人さんの「低速でできるステップワーク強化」コーナリングでうまく曲がれないと感じている方は、下半身での荷重コントロールが出来ていないからかも。高田さんが、とっておきの練習方法を伝授します。
第二特集は、「2020 MotoGP Machine」。スズキのミル選手がチャンピオンを獲得した2020年シーズン。スズキが躍動した原動力とは? またヤマハとホンダはどう対策していったのか br> スズキGSX-RRの開発者には、開発ライダーだった青木宣篤さん。ヤマハYZR-M1とホンダRC213Vの開発者には、それぞ...
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